大岩オスカール


俯瞰的な構図、大画面、緻密な筆致などにより、歴史や社会の多面性をユーモラスに表現する。日本・ブラジル・アメリカでの複数拠点の生活をもとに、それぞれの土地や都市生活と向き合った作品を制作している。

《太陽と10匹の妖怪》2020

©️ 2020 Oscar Oiwa Courtesy of Kadokawa Culture Museum

作家ステートメント

自分は人間として生まれ、「普通」に成長して生きてきたと信じてきました。 大人になり歳をとると、自分の生きてきた時間によってもう少し長いスパンで人類について考えられるようになりました。 人類はどうやって自然を味方にするかを学び、この数千年間で爆発的に増えてきました。 それによって、他の生物は犠牲になってきました。 自然界では、良いものも悪いものもないと思います。 動物であろうが、植物であろうが、虫であろうが、ウイルスであろうが自分にふさわしい環境があれば増えていくのは当然だと思います。 人間は確かに今の地球上では一番繁栄している生物、結果論として一番優れた生き物だと言えますが、それは人間の目線から見た考えかもしれません。 現在、人類を恐怖に陥れているのは、目に見えないウイルスです。 ウイルスは生き物とは言いづらい、とても小さなものですが人間の命を奪ってしまう。 謎が深いウイルスと戦うために人間は頭を使い、ワクチンを開発していく。一つの戦闘ゲームのような感じがします。

このようなことを考え、角川武蔵野ミュージアムのための作品を制作しました。 この作品では、海のような宇宙のような空間で妖怪のような、 生物のようなものが絵の中心にある光を眺めています。宇宙の中で地球を眺めているようにも見えます。 よく見ると、妖怪たちはコロナウイルスの感染が広がった国々の形になっています:アメリカ、イギリス、ロシア、中国、インド、フランス、イタリア、スペイン、ブラジル、そして日本。 光は皆が求めているワクチンとも言えるでしょう。

このウイルスの存在はしばらく無くならないと思います。この作品を見た人が希望の光を見つけ、「太陽と10匹の妖怪」がこの時代を表現した人類の宝物になっていくことを願っています。

【アーティスト略歴】

1965年 生まれ。サンパウロ大学建築学部卒業、アーティスト・グループ『昭和40 年会』のメンバー。ブラジル・サンパウロにて日本人の両親のもとに生まれ育つ。幼い頃から美術に親しんでいた大岩は、大学では建築を専攻する一方で、アーティストとしての活動も開始する。1991 年から2002 年の11 年間は日本で活動した。大岩はブラジル、日本、アメリカなど、国を移動しながら複数の文化に根差した自らのアイデンティティを模索する。緻密なタッチや鳥瞰図的な構図を使い、新聞記事やインターネットの中に社会問題の糸口を見出し、入念なリサーチをもとに大画面を仕上げる作風で知られ、国内外の多くの美術館で作品が収蔵されている。近年の主な個展に「眠る世界の夢」(2020、カリフォルニア州立大学パシフィックアジア美術館 / パサデナ、アメリカ)「大岩オスカール リオ、東京、パリ」(2019、パリ日本文化会館 / パリ)、「大岩オスカール 光をめざす旅 」(2019、金沢21 世紀美術館 / 石川)など。主なグループ展に「上海都市空間芸術季」 (2019、SUSAS/ 上海、中国)など。2019年に紺綬褒章受章。

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