コロナ時代のアマビエプロジェクト

2020年、「新型コロナウイルス」が世界中で猛威を振るい、
今なお多くの人を 苦しめています。
その渦中でSNSで話題となり、
多くのメディアででも紹介されるなど、注目を集めてきたのが、
幕末の熊本沖に現れ、疫病について予言したといわれる謎の 妖怪“アマビエ”。
今回、「コロナ時代のアマビエ」を、
作家の自由な想像力とユニークな表現力で
生み出していただく《アマビエ・プロジェクト》を実施いたします。

《コロナ時代のアマビエ》プロジェクトについて

人類は常に感染症(流行り病)に苦しめられ、その中で多くの命が失われてきました。100年前のスペイン風邪では、エゴン・シーレ、そしてギュスターヴ・クリムトが命を落としています。新型コロナウィルスは、他のウィルスと同じように目に見えないだけでなく、一定期間潜伏することで、感染の拡大を捉えにくくし、且つまた早期の発見も難しくさせる、とても厄介な感染病です。日本も含め数多くの人命が失われ、その性質から、当分の間わたしたちはこのウィルスと共に生きていかなければなりません。

多くの人々は不安を抱え、その不安は時として他者への攻撃へと転じ、社会を居心地の悪い場所へと変えかねない不安定な状況にいるように思います。あるいは心に重いものを抱え、つぶされそうな思いで内へと引きこもらざるを得ない人も少なくないでしょう。そんな不安を抱えながら生きていくため、人々は疫病から自分を、家族を、共同体を守るため、希望の物語を生み出し、そこに形を与えてきました。 コロナウィルスの感染拡大の中、多くの人たちを引き付けた妖獣アマビエは、あまびこが訛ったものとも言われますが、人々の不安によって召喚されたように思います。幕末に熊本沖に現れたとされるアマビエは実際には疫病を終わらせてくれたわけではありません。この先に良いこともある、とだけ言って海中に帰っていったとされます。それでも人々の救いになりました。

科学的知識によって世界を理解しようとする私たちにとって、魔除けは迷信に過ぎないかもしれませんが、私たちの気持ちに変化を与えることはできます。京都大学が所蔵する瓦版に描かれたアマビエの、なんとも奇妙で力が抜けてしまうようなあの造形が、多くの人をひきつけ、それを様々な人が表現しているのを見て、造形には人を動かす力がやはりあるのだと、改めて確認させられたように思います。

今回のプロジェクトでは、過去のアマビエの焼き直しではなく、コロナ時代に生きる私たちの不安に変化を与える「現代のアマビエ」を見たいと思います。それをアマビエと呼ぶ必要もないと考えています。私たちの存在を、私たちの想像を、超えた「何か」を見ることで、私たちの眼は未来へと向けられるようになるのではないかと考えます。そのためにアーティストに力を発揮していただき、未来に向けたイメージをミュージアムから世界に発信するプロジェクトを角川武蔵野ミュージアムで実施します。

神野真吾(角川武蔵野ミュージアム アート部門ディレクター、千葉大学准教授)

展示作家作品スケジュール

2020年11月6日〜3月末

会田誠《疫病退散アマビヱ之図》

2021年1月〜2022年4月4日

鴻池朋子《武蔵野皮トンビ》

2021年3月31日~10月4日

川島秀明《SHI》

2021年7月3日〜10月31日

荒神明香《reflectwo》

2021年8月18日〜常設展示

大岩オスカール《太陽と10匹の妖怪》

2021年10月8日〜2022年5月9日

大小島真木《綻びの螺旋》

※2022年1月21日~2022年5月8日まで開催中の展覧会「コロナ禍とアマビエ」にて会田誠、川島秀明、荒神明香の上記作品を会場内に展示中(荒神明香の《reflectwo》は構成を一部変更)

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