館長通信

No.192026/8/15

避難所は何とかならないのか

熊本で再び起きた大地震。今年4月は2016年の大地震から10年の節目。私も熊本で航空自衛隊のブルーインパルスの飛行を見ました。熊本の人たちの努力で復興が進みつつあるのをみて心強く思ったのですが、またも大きな被害を出しました。日本は地震大国だとわかっていても、度重なる被災には言葉もありません。

今回の震災で残念なこと。それは今回も震災関連死が出てしまったことです。せっかく地震からは生き延びたのに、どうして……と思ってしまいます。地震そのものは天災ですから仕方のない部分もありますが(それでも一般住宅の耐震性の強化が進んでいないのは行政の責任も大きいのですが)、震災関連死が出てしまうのは、国や地方自治体の責任です。

以前、テレビの防災番組で、関東大震災を振り返ったことがあります。いまから103年も前のことですが、当時の避難所の写真を見て、絶句してしまいました。いまの避難所と大差ないのです。体育館に大勢の被災者が雑魚寝だったのです。

私は阪神・淡路大震災や中越地震、東日本大震災をNHK記者として取材してきました。どこに行っても、避難所は大勢の人たちが雑魚寝でした。とりわけ阪神・淡路大震災では水道が止まったためにトイレの水が流せず、トイレの機能が停止してしまった避難所も多かったのです。被災者たちは屋外で用を足すというありさまでした。

2011年3月の東日本大震災では、体育館の床に直接寝て、インフルエンザに罹患した人が多数出ました。いまも自然災害が起きると、被災者は避難所で雑魚寝。それを避けて自動車の中で寝泊まりしているうちに熱中症で亡くなった人が出たのです。

この100年間、日本の政府は何をしていたのだと怒りがこみあげてきます。最近は段ボール製のベッドや家族ごとにカーテンで仕切ってプライバシーを守ったりという取り組みも進んでいますが、いざというときに、このありさま。情けなくなります。

先ほど触れた防災番組では、イタリアの避難所事情も取り上げました。イタリアも地震大国です。大地震が起きると、すぐに仮設住宅が建ち並びます。そこで目を引いたのは、被災者の人たちに供される食事です。パスタが出るのはさすがイタリアと思ったのですが、もれなくワインが出るではありませんか。ワインがあってこその人権、というわけです。

これって、被災地では贅沢なのでしょうか。日本はどうも大きな災害が起きると、「みんなで耐え抜こう」とばかりに「共同受忍論」が登場します。まるで、「非常時なんだから贅沢を言うな」とでも考えているような避難所の環境の悪さです。

しかし、もし日本が人権大国を標榜しようというのなら、被災しても人権は守らなければなりません。猛烈な暑さの中でじっと耐え忍ぶ被災者たち。いますぐにできることはあるだろうにと、テレビ画面を見て歯がゆい限りです。

角川武蔵野ミュージアム館長
池上 彰

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