館長通信

No.032025/03/15

「楽しい図書館」を

先日、児童文学者の角野栄子さんを訪ねて「魔法の文学館」に行ってきました。 江戸川区南葛西の「なぎさ公園」の丘に建つ「魔法の文学館」は、角野栄子さんの作品と功績を多くの人に知ってもらい、子どもたちに児童文学に親しんでもらって、豊かな想像力を育む場となることを目指したということです。

純白の建物は、わが角川武蔵野ミュージアムと同じく隈研吾氏の設計です。中に入ると、すべては「いちご色」。『魔女の宅急便』の舞台となったいちご色の「コリコの町」が広がっています。ここでも壁一面に映し出されるプロジェクションマッピングなど楽しい仕掛けがあります。

親子連れで来て、一緒に児童書を読んでいる姿は微笑ましいものです。熱心に本を読みふける子どもたちの姿を見ると、「日本の未来は大丈夫」と思わせます。

わが角川武蔵野ミュージアムでも、子どもたちを対象に絵本の「よみきかせ会」を毎月開催しています。こちらも将来の読書者層拡大を構想しているというと大袈裟でしょうか。でも、本を読むのが好きな人の裾野を広げることが、その国の知の基盤を築くことだと信じています。その点で、両館とも目指すところは同じかもしれません。

角川武蔵野ミュージアムは必ずしも交通の便に恵まれているとは言えませんが、それは「魔法の文学館」も同じこと。それでも、わざわざ足を運んでいる人たちの姿を見ると、「負けてはいられない」と思ってしまいます。「魔法の文学館」は景観が自慢の「展望の丘」と一体になっているのが特徴ですが、周囲と一体となったといえば、角川武蔵野ミュージアムも「ところざわサクラタウン」と一体化しています。

先日、「サクラタウン」の一角にある「ラーメンWalkerキッチン」でバレンタインシーズン限定の「チョコレートラーメン」をいただきました。おそるおそる箸をつけたのですが、味のイメージは「ちょっと甘い担々麺」と言えば、少しはおわかりいただけるでしょうか。この店も常に新たな挑戦を続けています。

腹ごしらえを済ませたら、その横にある書店「ダ・ヴィンチストア」へ。さまざまな書籍が販売されていますが、全国各地のユニークなラーメンも売られているのには吃驚。思わずいくつものラーメンを買い求めてしまいました。まさか書店でラーメンを買うことになるとは。

ここでラーメンではなく書籍を買い求め、同じフロアの「タリーズ」でコーヒーを味わいながら読み耽る。至福の時間だとは思いませんか。

何度来ても、そのたびに新たな発見がある、文学だけではない魔法の館。そんな施設を目指してまいります。

角川武蔵野ミュージアム館長
池上 彰

Pagetop