企画展/イベント/ライブラリー
Photo:Kenshu Shintsubo
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《米谷健+ジュリア展》 だから私は救われたい
日本初大規模個展を開催決定! 国際的に活躍中の日本人とオーストラリア人によるアーティストユニット米谷健+ジュリア
美とユーモアと毒を併せ持つ彼らの作品は 現代アートの重要な要素である社会性への関心が高く、リアルと空想を行き来する場である角川武蔵野ミュージアム(エディット アンド アートギャラリー)のグランドオープンの展覧会としてふさわしいものと考えています。
また、サイエンスや伝説にも関心を持つ彼らの作品は、人間の想像力を取り戻し、新たな世界を創造する起点となる事を目指す角川武蔵野ミュージアムの理念にもつながります。サブタイトルの「だから私は 救われたい」の「私」とは、アーティストの健とジュリアであると共に、私たち、あるいは地球の生命体全てであるのかもしれません。環境破壊、気候変動、パンデミック、経済動向など、無数の不安と共に生きている私たちは、古来より救い主を求め、その姿を描き、刻んできました。
現代に生きる私たちはどのように不安に立ち向かっていくのか?
「救われたい」思いはどのよう果たされるのか?
このわれわれに向けられた永遠の問いを、美しくも毒のある彼らの作品群は喚起させることでしょう。
展覧会の見どころ
1.国内ミュージアムでの初の大型個展
彼らの代表作が、まとまった形で見られる展覧会は日本初。
その中でも、《最後の晩餐》(2014年)と《大蜘蛛伝説》(2018年)は国内初公開となります!
2.海外においても高い評価を受けているアーティスト。
国際的な芸術祭であるベネチア・ビエンナーレのオーストラリア代表(2009年)の1組として選ばれるなど、海外の芸術祭、美術館で活躍してきました。主な展覧会に「シンガポールビエンナーレ 2013」(シンガポール国立美術館)、個展「The Last Temptation」(2015年、オーストラリア国立美術館)、「ホノルル・ビエンナーレ2017」など。今年10月27日よりニューヨークにて開催される第1回アジア・ソサエティ・トリエンナーレに出展予定です。
3.コロナ禍の今、福島の原発事故から10年、だからこそ見てほしい現代アート作品。
彼らは、作品のテーマとして、社会問題、特に環境問題を扱ってきました。代表作の一つ《クリスタルパレス》(2012年-)は、ウランガラスを素材とし、妖しく発光する作品です。
しかし、美しさの一方で、その素材が原発と深い関わりを持つものだと気づいたときに、その美しさは全く違った印象を与えます。原爆、原発事故を経験した日本において、この作品と向き合うことは特別な意味を持つこととなるでしょう。
そして、このコロナ禍を予見したかのような2020年の新作《Dysbiotica》は、私たちの世界が、微生物の秩序の上に成り立っていることをモチーフにしており、そのバランスを壊す主体としての人間に問いをつきつけるものだと言えます。ウイルスの蔓延によって、私たちは世界のバランスが崩壊したように感じているかもしれませんが、果たしてそうなのでしょうか?
アフターコロナの世界における人間の進むべき方向が見えてくるかもしれません。
出展作品
1.《大蜘蛛伝説》2018年
1950年代に天然ウランの採掘が行われた岡山県の人形峠には、 古くから峠越えの旅人を喰らう巨大な蜘蛛がいて、藁人形を囮に使って退治したことから、そこを「人形峠」と呼ぶようになったという。本作と対の作品に、巨大蟻をモチーフにした立体作品《生きものの記録》(2012年)があるが、それはオーストラリア北部のウラン鉱山付近で、先住民族アボリジニによって語り継がれる『緑蟻ドリーミング「その大地を掘り起こせば、巨大緑蟻が現れ、世界を踏み潰すだろう」』という伝承をもとに制作した。「巨大蟻」と「巨大蜘蛛」という極めて類似性の高い伝承が、いずれもオーストラリアと日本のウラン鉱床付近に存在するという事実は興味深い。数万年の歴史を誇るアボリジニには、祖先、神々、ドリーミング(伝承)などが運ばれてきたとされる「ソングライン(歌の道のり)」という歴史認識があるが、 一説によると、そのルーツは、海を越え日本の方角から来たと信じられているという。巨大な蟻や蜘蛛が人を襲い、世界を破壊するという伝承は、危険性を孕んだ「ウラン」に近づく者への警告か、あるいは先住民族の予言であったのだろうか。
2.《Dysbiotica》2020年
「Dysbiotica」とは、腸内細菌叢のバランスの崩壊を意味する語「Dysbiosis」からの造語。絶妙なバランスで構築された微生物群によるミクロ世界の崩壊がマクロ世界へと連鎖していくこと、そして、人と動物と微生物の織り成す共生の世界の崩壊を表している。我々自身の数年間に及ぶ無農薬農業の経験をベースに、オーストラリアのクイーンズランド工科大学微生物研究所の研究者との共同作業を通じて得た着想をもとに制作した。
3.《クリスタルパレス》2012年-
ウランガラスで作られたシャンデリアのインスタレーション作品です。シャンデリアの1つ1つに原発保有国の複数のシャンデリアによるインスタレーション。1点1点に原発保有国の国名を付け、その国の原発からつくり出される電力の総出力規模(メガワット:IAEA資料参考)をシャンデリアのサイズに比例させた。ウランガラスを用いて、ブラックライトの照射によってウラン特有の幻想的な緑色の光を発する構造とした。2011年の福島第一原発事故を受けて制作を開始、2013年に世界の原発保有国31カ国分を完成した(その後更新を続け、現在では32カ国)。作品タイトルは、1851年ロンドンで開催された第1回万国博覧会の会場として
建造された全面ガラス張りの巨大建造物「クリスタルパレス(水晶宮)」にちなむ。
4.《最後の晩餐》2014年
オーストラリア南東部に広がるマレー・ダーリング盆地は、オーストラリア最大の食料生産地域(国内の生鮮食品の9割を生産)。しかし、大規模農業による過度の灌漑により、塩分濃度の高い地下水が地表に上昇する塩害が進行し、気候変動による高温少雨も重なって農業継続が困難となってきている。そのため、毎年55万トンの塩水を地下から汲み上げて、塩分濃度の高い地下水の増加を食い止めるようとしている。この塩水から精製した塩を用いたのが、本作である。2010年の9月から12月にかけての、マレー・ダーリング盆地の中心部にあるミルデューラでの滞在時に抱いた塩への興味をきっかけに、気候変動など地球規模の環境破壊に加え、放射能汚染、食品添加物、遺伝子組換え、農薬、化学肥料などによる食の安全性に対する疑念と不安をもとに制作した。
作家プロフィール
■米谷健+ジュリア/Ken + Julia Yonetani
現代美術家。
日本人とオーストラリア人のアーティストユニット。
インスタレーション、パフォーマンス、写真、映像、立体など、
環境問題や社会問題を主題に素材を活かした、
大規模インスタレーション作品を制作。
現在、京都の農村にて無農薬農業も兼業しつつグローバル
に制作展示活動を行っている。
開催期間 | 2020年11月06日[金] 〜 2021年05月31日[月] |
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開催エリア | 4F エディット アンド アートギャラリー |