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Photo:Kenshu Shintsubo

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魚っとこ水族館~金魚日和~

金魚好きがきっかけでその後世界的な博物画のコレクターにまでなった荒俣宏さんが、
ありとあらゆる金魚を集めました。

本特集展示では、生き物好きの少年がアラマタ博士になるきっかけとなった金魚との出会いや、少年を導いた金魚博士を紹介します。博物画やアート、文化に見る金魚の楽しみ方を通して、「金魚」にひそむさまざまな驚き(ワンダー)を見つけてみませんか。

🐠荒俣宏氏のコメント🐠  金魚――日本に泳ぎついた“Wonder Fish(ゆめのさかな)”

 金魚はおよそ2000年前に中国でうまれた。フナという川魚のなかから偶然に赤い色が出る魚があらわれ、ヒトの手で飼われるようになったら、色や形のことなる子どもが次々にうまれて、中国の貴族たちだけの宝となった。
 じつは祖先のフナというのがホントウにふしぎな魚で、オスメスでふつうに繁殖するけれども、メスだけでクローンの子をふやせる力もある。また遺伝子の数が他の魚より多くもつものがいる。遺伝子が多ければ、その分だけ多くの変異が起こりやすい。じつは金魚は、そんなフナ仲間のうちでもいちばん遺伝子セットを多く持つ種類の子孫だったのだ!
 中国の人たちは「奇」なるものを喜んだので、金魚にも突然変異の出現を望んだ。結果、からだが細長いのやまん丸いのや、背びれがないのや、尾ひれがベールみたいに長くなるのや、最後には両目がとびだしたり、大きな水泡が目の下にできる、伝説の龍もおどろく奇抜で奇怪な形をつぎつぎに作りだした。
 こうして金魚はヒトが思いのままに作り替えられる「夢の魚」となって、今から約500年前に日本に運ばれてきた。でも、日本人は形や色が単にへんてこりんな怪魚を好まない。池や鉢で飼うため上から眺めて愛でるには、左右対称、頭からしっぽに流れるライン、そして模様も着物柄のようにデザインが効いた気品が大切だった。いわば「理想の金魚」に近づけるように、きびしく磨きをかけた。まるで池にさく睡蓮の花か、水面に落ちた桜のような均整美を求めた。風流の美意識でいうなら、日本の金魚は粋(すい)をきわめた。
 その後、中国と日本は明治になるまでおたがいに独自の美学によって金魚を殖やしつづけた。昭和時代にやっと中国金魚が日本にも来るようになったとき、おたがいに相手の金魚を見て、まるで別種かと思えるほど違っていることに、両国ともおどろいた。わずか二百年ほどの断絶だったのに、と。
 じつは、金魚は18世紀にヨーロッパにも中国産が持ち渡られ、この多様性が注目された。あのダーウィンも金魚の子の変化を、進化論の研究材料にと考えた。いや、その期待は今や果てが知れない。変化しやすいという金魚はメンデルの遺伝研究の材料になり、現在は金魚のゲノム解析が日本ですすみ、わたしたち脊椎動物が多様に進化した謎を解こうとしている。金魚はいよいよワンダーな生きものになるしかない!

    荒俣ワンダー秘宝館主  荒俣宏

🐠荒俣宏館主とたどる金魚のワンダー🐠

左から:伊藤熊太郎画(〈一社〉大日本水産会所蔵『日本水産動植物図集』原画より)/中華人民共和国漢唐壁画展(個人蔵)/「郭中美人競 角玉屋若紫」鳥高齋榮昌(個人蔵)/ブリキの金魚/「硝子玉の金魚」(当館蔵)

◆金魚との出会い 金魚博士との出会い
昭和30年代、縁日では金魚すくいが定番でした。そのころアラマタ少年は、駄菓子屋さんの裏の池にいた金魚が泳ぐ繊細な姿を見て夢中になります。金魚を飼い、観察し、日記をつけ、本を読みあさりました。大人顔負けの研究熱心さを発揮した観察日記をはじめ、憧れの金魚博士・松井佳一氏の著作を紹介します。

◆"日本の美"の象徴
金魚は江戸時代に武士が養殖を行い、さかんに品種改良され、さまざまな美しい新種が誕生しました。新しい金魚を安定して次の世代へつなぐのはむずかしいもの。ぷっくりとした姿、尾ひれが優雅な姿、三色が斑点模様になっている姿……人為選択を繰り返してさまざまな金魚を追求した日本産金魚の系統図(原寸大)を、金魚博士・松井佳一氏がまとめました。日本人の美へのこだわりがつまった、金魚系統図の集大成です。
あなたの好きな金魚の祖先はどんな金魚か、金魚の歴史をたどってみてください。
◆中国金魚の美しさ
金魚発祥の国・中国の金魚は、日本とは別の進化をとげ、いまでもたくさんの品種が生まれています。目が上についた天頂眼やその仲間の水泡眼……一説には、狭い壺で金魚を飼育し、眼が上にくるように改良したとか。
中国からヨーロッパに輸出された金魚を描いたフランス人博物絵師・ソーヴィニによる絵をはじめ、中国の切手など、バラエティーの豊かさを誇る中国金魚を紹介します。
◆金魚の博物絵師たち
日本の金魚はアメリカをはじめ海外にも輸出されていました。博物絵師の伊藤熊太郎による博物画を鑑賞すると、金魚が昭和初期の重要な水産物だったと実感でき、またアートとしての完成度も高い作品です。伊藤氏同様、金魚絵師として活躍した大野麥風の作品も展示します。
※時期によって展示作品が入れ替わる予定です
◆アートのなかの金魚たち
金魚はよく浮世絵の題材になりました。遊女や童子とともに描かれることもあり、金魚が生活に溶け込み、愛されていることが分かります。また、現代のアーティストも金魚の魅力を作品にしています。
一瞬の美しさを永遠にとどめた、さまざまな作品を紹介します。
🐠開催概要🐠

●展覧会タイトル:魚っとこ水族館~金魚日和~
※「魚っとこ」は「ぎょっとこ」と読みます。
●会場:角川武蔵野ミュージアム4階 荒俣ワンダー秘宝館
●会期:2023年7月8日(土)~2024年1月14日(日)
●チケット価格(税込): KCMスタンダードチケット
●オンライン購入(https://tix.kadcul.com/)、当日窓口購入
一般(大学生以上):1,400円/中高生:1,200円/小学生:1,000円/未就学児:無料
※本展覧会の他、当館のスタンダードエリア(常設展エリア)をご覧いただけます。

開館時間:日~木10:00~18:00/金・土 10:00~21:00 ※最終入館は閉館の30分前
休館日:第1・3・5火曜日
*休館日、開館時間は変更となる場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
*「1DAY パスポート」「イブニングパスポート」でも入館いただけます。
*展示替えなどにより、日程によっては一部施設に入場できない場合がございます。
*展示内容が変更、または中止になる場合がございます。予めご了承ください。

[主催]角川武蔵野ミュージアム(公益財団法人角川文化振興財団)

開催期間 2023年07月08日[土] 〜 2024年01月14日[日]
開催エリア 4F 荒俣ワンダー秘宝館
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