館長通信

No.172026/5/15
「銀河鉄道999」見ましたか?
1979年に公開された劇場版「銀河鉄道999」でアニメの魅力を知ったという人も多いようです。それが当館で新たなバージョンで見ることができるようになりました。知人たちに、この話をすると、まるで子どものように目を輝かせる人の多いこと。不朽の名作とは、こういうことを言うのでしょう。
どんなスペクタクルが展開されるかは、私が説明するまでもありません。ぜひ全身で体感してください。公開前にメディア向けに内覧会を開いたところ、何人かは目に涙を浮かべていたとか。
私も見終わった直後、感動に目頭が熱くなりました。終盤に城達也さんのナレーションが流れると、もういけません。言葉を失ってしまいました。ゴダイゴの主題歌が流れただけで涙ぐむ人もいます。
この物語をどう見るか。ただただ素晴らしいスペクタルとして見ることもできますが、人生経験の量によって、見方が変化するのではないかと思います。
私にとって、これは少年の成長の旅であり、少年時代に別れを告げる物語でもあります。遠い昔、そう言えば自分も少年時代に別れを告げたことがあったなあ……と懐古すると、自然と涙腺が緩みます。
時代は遠い未来。貧富の差と機械化が進んだ地球。格差が広がり、AIによって翻弄される現代を見るにつけ、松本零士さんの将来を見通す構想力には舌を巻きます。
AIの研究開発が進み。中国ではハーフマラソンの人間の記録をロボットが抜くまでになりました。カーブも正確に回り、ゴールに突進する姿は恐怖心すら抱かせます。AIに身体を与える、いわゆるフィジカルAIの進歩で、星野哲郎が憧れた「機械の体」を獲得できるのも、もうすぐかも。その「機械の体」を獲得できたら、私たちは「永遠の命」を得ることができるのでしょうか。でも、そんな「永遠の命」を、私たちは本当に欲するのでしょうか。こう考えると、この物語は、私たちに「生の哲学」を考える機会を提示しているように思えます。
ただ、私たちとして、この企画を通じて「こう考えるべきだ」などと思考の形式を強制するつもりはありません。とにかく楽しい時間を過ごしてください。銀河鉄道から降りても、あなたの旅は終わっていないはずです。
では、行ってらっしゃい!
角川武蔵野ミュージアム館長
池上 彰
